MRT台北駅と中山駅を繋ぐ中山地下街にある「Oresama創意倉庫」は、鮮やかで可愛らしい手描きのイラストが描かれたグッズを販売している雑貨店である。台湾に旅行で訪れると、街中で色とりどりの雑貨やアクセサリーが売られているのを目にする事があるだろう。今回は、その中でも個性的なペイントグッズで多くの人を引きつけるアーティストにインタビューし、ご自身の考え方や、台湾らしいビジネススタイルに関してお話を伺った。
「幼少の時から芸術に関して興味が有ったが、それをどう表現して良いのか解らなかった。」と語るのは店主の林少威さん。専門学校では広告を学び、油絵、水彩画、平面デザイン、立体デザインなど、多くの基礎を習得したが、卒業後はサービス業に従事していた。その中で顧客や同僚から「特別なもの」や「ほかとは違ったもの」を求められ、既存のバッグや小物に自分自身でイラストを描き、それをプレゼントしていた所、多くの人からの好評を受け、それを商品として販売する決意をしたと言う。
実際の販売に先駆けて、雑貨素材や塗料を選定する際は多くの苦労が有ったと言う。特に水洗いした時に色落ちしない塗料に関しては「海外からも塗料を調達、調合して、時間を費やして問題を解決した」と語り、イラストのデザインにおいても、多くの人に受け入れられる商品はどんなものか、検討を重ねたと言う。そして3年前、台湾人をはじめ、外国人も多く集まる士林夜市に屋台店舗の場所を申請し、試験販売を開始した。その過程において実際にペイントしながら販売する独特のスタイルを確立し、多くの人を引きつける事に成功した。「商品を売っているだけだと、手描きなのかプリントなのか見て解らない」、「実際にペイントしていると、多くの人が興味を持って見てくれる」と、「魅せる販売」の効果を強調する。
現在は中山地下街に店舗を移して営業を続けている。「夜市だと雨の日に不便で、お客さんがわざわざ来てくれても見つけられないこともある。地下街だと場所は固定されているし、お客さんも解り易い。場所柄、観光客も多い」とし、また、士林夜市で屋台店舗を経営するには2坪でひと月3万5千元の利用費が必要なことから、快適な環境が整っている中山地下街へ移転する事になったと言う。現在では常連客やシンガポール、香港、日本からの観光客も訪れ、お土産やプレゼントとして、複数個購入して行く人が多いと言う。また「観光客で言えば、士林夜市の方が数は多いが、地下街の方が購買意欲の高い人が多い」と言う発見が有ったことも明かしてくれた。
林さんは商品の仕入れ、加工、販売を全て一人で行なっている。また手間を惜しまない手描きのイラストにこだわりを持つ事については「MRTに乗っていても、日常生活の中にも毎日新しいものに触れ合う機会が有る。」、「お客さんにも考え方や表現の仕方が変化している事を見てもらいたい」と、イラストの変化を楽しんでもらいたいと言う願いがこめられていることを語った。また、今後の目標については「もっと違った風格を創り出して行きたい」とひとつの風格にとらわれない、柔軟なデザインを目指したい考えを述べた。
Oresama創意倉庫
中山地下街A31區